研究課題
中国秦嶺造山帯の地質変動史解明の目的で、その南北に位置する華南及び華北ブロックを含めて、現地にて地質調査を行った。その際、古地磁気及び地球化学的研究用の岩石試料をそれぞれの地塊から採取した。採取試料はすべて堆積岩である。華南ブロックでは、計8地点から合計112個のデボン紀と石炭紀の岩石試料を採取した。試料はすべて広西壮族自治区に広く分布する石灰岩で、その中には桂林のデボンー石炭紀境界国際標準断面付近のものも含まれる。秦嶺造山帯では、計4地点で計24個のデボン紀の岩石試料を採取した。また、華北ブロックでは、計17地点から計130個の古生代カンブリア紀から三畳紀までの岩石試料を採取した。採取試料から、磁化測定用試料を1個から複数個作製し、それらすべての段階熱または交流磁場消磁実験を行った。さらに、その結果を基に各試料の持つ特徴的な方向を主成分分析により取り出した。華南ブロックの標準断面からの岩石と秦嶺造山帯と華北ブロックの14地点からの岩石は現在の位置で地心双極子を仮定した方向と似た特徴的方向を示し、二次的に獲得された(すなわち、堆積当時の地球磁場方向を反映しない)磁化を担っていると判断された。その他の地点で採取された岩石は地心双極子を仮定した方向とは異なる特徴的方向を示すため、それらの地層の傾動補正後の方向は堆積当時の地球磁場の情報を持っている可能性がある。これらの岩石の磁化測定結果に基づいて、現在、華北ブロックのカンブリア紀二畳紀そして三畳紀の、秦嶺造山帯のデボン紀の、そして華南ブロックのデボン紀と石炭紀の仮想古地磁気極が求められている。地球化学的な研究としては、反射電子顕微鏡や蛍光X線分析計を用いた、採取試料の全岩及び微量元素分析を考えているが、現在、分析試料の作製をしている段階である。