研究分担者 |
任 振川 西南農業大学, 副教授
曽 明 西南農業大学, 講師
閻 玉章 西南農業大学, 副教授
李 道高 西南農業大学, 教授
松本 勲 愛媛大学, 農学部, 助手 (70036325)
石井 孝昭 愛媛大学, 教育学部, 助教授 (30136296)
近泉 惣次郎 愛媛大学, 農学部, 助手 (90116955)
天野 勝司 愛媛大学, 農学部, 助手 (70116903)
日野 昭 愛媛大学, 農学部, 助手 (10036353)
秋好 広明 愛媛大学, 農学部, 助手 (00036352)
渡部 潤一郎 愛媛大学, 農学部, 助教授 (10036311)
水谷 房雄 愛媛大学, 農学部, 助教授 (20026595)
YAN Yuzhang Southwest Agricultural University. Associate Professor
LI Daogao Southwest Agricultural University. Professor
ZENG Ming Southwest Agricultural University. Lecturer
REN Zhenchuan Southwest Agricultural University. Associate Professor
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研究概要 |
本研究の目的は,愛媛大学と西南農業大学を中心に研究者が相互訪問し,現地急傾斜地カンキツ園の実態調査の基づいて,これまでの研究成果も合わせて,セミナー形式で発表し,合理的な肥培管理法を追求することにあった。研究業績の概要は次のとおりである。 急傾斜地カンキツ園にあっては草生栽培の重要性が指摘された。草生栽培には(1)草の根による土壌物理性の改善(2)表層土壌の侵食防止(3)腐植源としての有機物補給(4)VA菌根菌など有用微生物の繁殖などが期待できる。たとえば,稲ワラなどの有機物の確保が難しい園では草の働きを積極的に活用することが大切である。このような草種は下層土を改良するだけでなく地上部は枯れて腐植源となる。またバヒアグラスの根にはVA菌根菌もよく寄生し繁殖する。その結果,バヒアグラスの根の周辺にあるカラタチの根にもよく寄生するようになる。VA菌根菌はリン酸の肥効を高めることが判明しており,カンキツの根にとっては有用菌なのである。 これまでに草生栽培用として導入された草種はほとんどが北欧原産のものであった。したがって,3月下旬から4月にかけて生長が盛んになり,カンキツ樹との間で要素の吸収をめぐって競合があった。カンキツ樹にとって,春枝は高収量を確保するには非常に重要である。草種の導入によって春枝の伸長や充実が抑えられるとすれば草生栽培の意義を失う。一方,南方原産のバヒアグラスのような牧草は冬季から5月上旬まではほとんど枯れた状態で,春季におけるカンキツ樹と草との要素吸収の競合は起きない。ただし,夏季には北欧型の牧草が高温のために生長が衰えるのに対して南方型牧草はよく繁殖するので除草剤による生長抑制が必要となる。しかし草を完全に枯死させるのが目的でなく,部分的に草の生長を抑えることができればよいわけで,除草剤の使用も少なくてすむ。 以上のとおり,急傾斜地カンキツ栽培にあっては,草の持つ諸特性をうまく利用した土壌管理法が有効であることの結論を得た。 次に,土壌の物理構造改善のための有機物施用についての研究成果が発表された。 すなわち,有機物施用土壌からはメタン,エタン,エチレン,プロパン,プロピレンおよびiso_-およびn_-ブタンなどが発生しているこが判明した。特にエチレンは0.5ppm以上になるとカンキツ根の生長を阻害することが指摘された。また主要なエチレン発生物質は,脂質特にグリコール脂質やステロール脂質に糖が結合した脂質であった。ヒノキ樹皮などには縮合型タンニンが含有されており,未熟バーク堆肥として使用するとカラタチの生育を著しく阻害する。このとき,あらかじめ0.1%の生石灰および0.1%の消石灰液に樹皮を浸漬しておくと,生長阻害作用が著しく減じることが明かとなった。また,炭はVA菌根菌の繁殖を高めることや,未成熟の有機物施用による生育阻害も軽減させる効果もある。この原因としては炭が抑制物質やエチレンなどの阻害ガスをよく吸着する特性と関係があることも判明した。 果樹の病害抵抗性に関与するリグニン生成についても,知見が発表された。病原菌の感染,切断傷害および高温度ストレスを受けた植物組織ではこれらの刺激によって生じる“ある因子"の働きによって,最初から遺伝的に不活性型で細胞壁に結合した型で存在する糖ペプチドが遊離され,遊離した糖ペプチドは外果からのストレスによって,組織内に生成されるエチレンの働きによって初めてその機能を発揮する。糖ペプチドの分子量は約数千と推定されるので,糖ペプチド自体が細胞膜を通過して,直接遺伝子を含んでいる細胞核に作用するとは考えられない。したがって,糖ペプチドは一度細胞膜に作用して,そこから何らかの第2次メッセンジャーを介して,あらかじめ植物細胞にセットされて存在するPAL(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ)や塩基性イソペルオキシターゼなどのリグニン生合成系をスイッチオンし,酵素蛋白質のde novo合成を引き起こして,最終的にグアヤシル型のリグニンを細胞壁に蓄積する。木化細胞壁は病原菌の侵入および菌糸伸展を阻止するものと考えられるとの見解が発表された。
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