研究課題
本研究では、各種電気化学及び分光電気化学的手法を用いて蛋白質の電極上での電子移動反応を明らかにするとともに、蛋白質の生物電気化学的性質の解明及びその工学的応用を目的とした研究を進めている。国際学術研究(大学問協力研究)初年度である本年度の研究実績は下記の通りである。1.Inーsitu CD分光電気化学法の開発と応用:円偏光二色性(CD)スペクトル測定が可能な分光電気化学セルを開発し、応用してi)チトクロムcの酸化還元電位の変化が蛋白質構造に由来する場合と対アニオンとのイオンペア形成による安定化によるものとに区別できること、ii)電子移動に伴うチトクロムcの構造変化のダイナミクス測定を初めて可能とし、還元反応に対する蛋白質構造変化に比べて酸化反応に伴う構造変化が遅いことなどを明らかにした。2.新規螢光分光電気化学法の開発:本研究で初めて新しい螢光分光電気化学測定用セルを開発し、正常に作動することを確認した。このセルを用いて、螢光性生体分子の酸化還元反応のダイナミクス測定を行ない、また、通常のボルタンメトリ-法では測定できない電子移動速度の遅い生体分子の酸化還元挙動の解明に有効な新しい螢光分光電気化学法も開発した。3.蛋白質の電極上での直接電子移動:ホウレン草由来の酸性蛋白質であるフェレドキシンを抽出し、直接電子移動が可能な機能性電極(例えばポリーLーリジンで修飾したカ-ボン電極)を作製するとともに、ペルオキシダ-ゼのカ-ボン電極上での直接電子移動反応を明らかにした。4.蛋白質分子間電子移動反応:チトクロムcとリダクタ-ゼ及びオキシダ-ゼとの蛋白質分子間電子移動反応について、呼吸鎖末端の電気化学モデルを組み立てて検討した結果、特にオキシダ-ゼとの反応においてチトクロムcのリジン残基の重要性を認めた。5.研究手法・測定技術の相互互換、協力体制の確立:相互交流による測定技術及びソフトウエアの移植を行なうとともにデ-タ-の共有と討論などを通じて研究協力体制を整備した。
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