研究分担者 |
JAN F. CHELE Virginia Commonwealth大学, 生物化学科, 教授
JAMES TURNER Virginia Commonwealth大学, 化学科, 準教授
FRED M. HAWK Virginia Commonwealth大学, 化学科, 教授
木田 建次 熊本大学, 工学部, 助教授 (00195306)
榊 茂好 熊本大学, 工学部, 教授 (20094013)
HAWKRIDGE Fred M. Virginia Commonwealth University, Professor
TURNER James Virginia Commonwealth University, Associate Professor
CHELEBOWSKI Jan F. Virginia Commonwealth University, Professor
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研究概要 |
本研究では,タンパク質の電極上での電子移動反応を制御することでタンパク質分子の電子移動を基礎電気化学及び各種分光学的手法を用いて解明し,その特異な機能を明らかにするとともにタンパク質の電子移動の幅広い応用のための基礎の確立を目的とした研究を進めた。当該年度の研究成果の概要は以下の通りである。 1.機能電極を用いた金属タンパク質の電子移動制御 電極表面に機能分子を修飾して電極を機能化する方法やIn_2O_3のような酸化物電極を用いることで,比較的分子量の小さい金属タンパク質の電極反応が汎用の電気化学測定法を用いて観測できるようになった。 (1)チトクロムc: 金や銀電極上に,例えば,ビス(4-ピリジル)ジスルフィドのようなイオウ原子を含む機能分子を修飾固定化したプロモ-タ-修飾電極は,電子伝達タンパク質であるチトクロムcの電極上での直接電子移動を可能にする(k^<o′>=5〜10x10^<-3> cm/s)。この種のプロモ-タ-修飾電極を用いて,未精製のチトクロムcやチトクロムcの変性成分の電極反応が明らかになった。ここでプロモ-タ-修飾電極を反応活性なマイクロ電極の集合体として取り扱い,ボルタモグラムのシミュレ-ション結果から修飾分子の被覆率の増加につれて,エントロピ-的に有利な,より均一な分子修飾表面を形成することが示された。 (2)ミオグロビン: 精製したミオグロビン(Mb)を用いて,pH6-8の溶液中,親水化処理したIn_2O_3電極上で初めて明確なRedox波(k^<0′>〉3x10^<-4>cm/s,E^<0′>=-0.14vs.Ag/AgCl, 拡散係数1x10^<-6>cm^2/s)を得た。また,不均一電子移動速度は電極界面の親水性に依存することを示した。馬心筋由来およびクジラ心筋由来のMbは,等電点(pI)がそれぞれ6.8および8.25と異なるが,両者ともpH6.5で最大の不均一電子移動速度定数を示した。これは,2つの起源の異なるMbの活性中心であるヘムの近傍の構造が互いによく似ており,タンパク質全体の電荷に基づくpIよりも電子移動と直接関連した局部構造の重要性を示すものである。 (3)フェレドキシン:フェレドキシン(Fd)は中性領域で負電荷を帯びた非ヘム系酸性タンパク質で光合成系の電子伝達機能分子である。ホウレン草由来のFdは,チトクロムcの速い電子移動が可能な機能性電極,例えば,In_2O_3を用い,ポリ-L-リジン,ポリ-L-オルニチン,ポリ-L-アルギニンなどのポリペプチドの共存下で速い電子移動反応(k^<0′>=ca.5x10^<-3>cm/s)が,酸化還元電位(E^<0′>)=-0.6V(vs.Ag/Agcl)付近に勧測できた。この可逆波はpH6-10の領域では目立った変化はなく,安定した電気化学応答を示した。この電極は,トウモロコシ由来のFdにも有効で,光合成機能や遺伝学的見解と関連した興味ある結果も得られた。また,カ-ボン電極上にポリペプチドを修飾固定化した機能電極上でFdの速い電横移動が認められた。 この種の電極を用いてFdの電極反応を制御することで,生物電気化学的な精密合成化学反応の可能性や酵素との電子伝達効率の評価の可能であることが示された。 2.新規分光電気化学法の開発と応用 光透過性の酸化インジウム電極を用いて,微量の生体分子試料の測定が可能な分光電気化学セルを製作し,ミオグロビンやフェレドキシンの電子移動反応に伴う紫外・可視及び円二色性スペクトルを得た。金メッシュ電極を用いて非水溶媒中での酵素モデル分子としてのルテニウム二核錯体の分光電気化学挙動を測定し,混合原子価状態のスペクトルを得た。さらに,蛍光分光電気化学測定のための新しいセルを作製した。 3.細胞膜電子伝達機能モデルとしての分子修飾電極の製作と電子移動制御 アルキルチオ-ル系分子修飾電極に電子伝達媒体としてメルドラブル-(MB)を埋め込んだ細胞膜モデル電極を構造した。金属シアノ錯体との電極反応のモニタ-からこのデカンチオ-ル単分子膜はMBを通して電子移動方向が制御されており,細胞膜での電子伝達機能の簡単な人工的モデルとなることが示された。
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