研究概要 |
南九州においても落葉果樹の栽培が重要となり,特に早生品種を中心に新しい果樹への関心が高まっている。鹿児島はアメリカ合衆国ジョ-ジア州と気候が酷似し,落葉果樹の生産が多い。そこでジョ-ジア大学の研究者と共同して鹿児島とジョ-ジア州での落葉果樹栽培適地の比較やジョ-ジア州からの各種果樹の導入と馴化を行うとともに,これら落葉果樹の栽培特性と繁殖および果実品質特性と収穫後の取り扱いについて研究した。一方,野菜についてもジョ-ジア州は育苗業が盛んであるので,日米での育苗法や繁殖法の比較研究を行った。 まず,初年度には鹿児島とジョ-ジア州の気象条件の比較を行った結果,両地は酷似しているが,夏期は異なり,ジョ-ジア州の方が高品質果実の生産には日照時間や温度から多湿な鹿児島より有利であることが分かった。 次にジョ-ジア大学農学部園芸学科の研究者の協力を得て,ジョ-ジア州におけるモモ,ブル-ベリ-,マスカディンブドウ,ブラックベリ-,ラズベリ-の栽培品種,栽培適性,収量性,果実品質,貯蔵や加工適正等から導入すべき種類と品種を検討した。モモは開花時期,低温要求性,果実品質から有望と考えられるFlorida-king Goldprince,Juneprince,Nectar,Fireprince,Junegold,Starlite,Loring,Dixilandの9品種を選定し,導入した。マスカディンブドウは開花タイプ,果実品質,果皮色,用途から,Fly,Granny,Val,Noble,Carlos,Summit,Nesbitt Cowat,Loomis,Triumph,Dulcetの10品種を導入した。またブラックベリ-についてはBlack Satin,Hull,Cheyenneの3品種を導入し,これらは現在農林水産省植物防疫所で隔離検疫中である。マスカディンブドウの栽培品種は我が国へは未導入であるので,栽培適性について,さらに試作を行う必要がある。さらにジョ-ジア州で栽培されている品種の中から,有望と考えられるものをブル-ベリ-では8品種(機械収穫用,観光農園用)を選定し,モモでは高品質の65品質のうち9品種が加工にも適していること,マスカディンブドウでは生食用および加工用品種に分けて選定した。 最終年度は主として蔬菜の育苗,生産,品質管理について調査研究した。メロンでは耐病性,耐暑性,高糖度,肉質の点が育種の目標であること,生食用甘タマネギは耐病性,収量性の問題が解決され成果を上げていることから,これらは我が国への導入有望野菜であることが分かった。その他,耐暑性や耐病性の蔬菜を作出するための気質導入,高・低温における馴化法と培養植物の馴化法,輪作体系や除草剤の利用法,耐暑性高品質トマトの栽培,収穫物の非破壊測定法による品質評価法等について調査研究した。他方,ジョ-ジア大学のJoyce G.Latimerとの共同研究により,接触刺激が蔬菜類の生育抑制効果があり,コンパクトで大夫な苗生産に応用可能であること,刺激3日後にその効果が発現し,生育旺盛な植物ほど強く表れることを明かにした。 招聘したジョ-ジア大学の3名の研究者は鹿児島大学の研究者と共同して研究するとともにセミナ-を行った。Max E.Austin教授は鹿児島におけるラビットアイブル-ベリ-の低収量の原因を究明するために主として気象を調査した。Stephen C.Myers准教授は導入したモモの鹿児島での馴化,繁殖,整技法などの栽培技術について討議した。Hazel Y.Wetzstein准教授は組織培養法を用いた果樹の繁殖法と蔬菜の育苗の専門であり,マスカディンブドウ,ブル-ベリ-,早生モモ等の馴化や生態調査並びに繁殖法について共同研究した。これらの3年間にわたる研究,討議を通じ,両大学並びに関係研究機関の多数の研究者と研究,交流を行うことができた。
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