研究課題
福永(研究代表者)と岩政(研究分担者)は、チェンマイ大学医学部を約一週間訪問し、相手側研究分担者および研究協力者と研究計画実施のための細部の打ち合せを行った。平成2年度は、採用決定通知が遅れたため、事前の連絡が不充分であった理由による。平成2年のチェンマイ地域では、日本脳炎及びデング出血熱(DHF)の流行が小規模であり、訪問時には入院患者はDHFの3名にすぎなかった。一方、単純ヘルペスウイルスII型(HSVーII)の分離に関しては、研究協力者の努力により20株以上が得られており、満足以上であった。岩政は、沖縄において9株のHSVーIIウイルスを分離し、そのDNAについて分子疫学的研究を実施しており、本土株との差異を明らかにしている。すでにチェンマイ地域において、多数のHSVーIIウイルスが分離されていることにより、沖縄分離株とチェンマイ分離株の比較を現在進めている。牧野(研究分担者)は、約2週間チェンマイ大学医学部に滞在し、デングウイルス4型E蛋白のNー末端約2/3領域の発現蛋白を用いて、どの程度日本脳炎(JE)とDHFが鑑別可能かを検討した。但し、上述のごとく、JEとDHFの患者血清は入手困難であったため、得られる一般血清を用いた。結果:JE抗原を用いたELISA法で、15、000倍の高値を示す抗デング血清は、上記の発現蛋白に対する染色価でも32、000倍の高値を示した。一方、抗JE血清と思われるサンプルでは、ELISA法で12、000倍の高値を示したが、DEN4E発現蛋白に対する染色価は、高々1000倍かそれ以下であった。従って、この発現蛋白は、JEとDHFの鑑別診断用抗原として利用できる可能性があり、平成3年度には、患者血清を用いたより詳細な検討を行いたい。