研究概要 |
早稲田大学・ロ-マ《ラ・サピエンツァ》大学間交換協定[昭和61年締結]に基づく共同研究計画(言語学部門およびロマンス言語学部門)を継続発展させることを目標とした。 ソシュ-ル言語学部門:ロ-マ大学において、ソシュ-ル言語学の国際的権威T・マウロ教授とともに,ソシュ-ル言語理論の再検討に着手し,こんにちのあらゆる言語理論におけるソシュ-ルの現代性を認識し,主張すべきことを検討した。ソシュ-ル言語理論に関しては,その普及版で知られる,いわゆる2分法の真の意図の追求,また構造主義を一般に理解されているように歴史主義と2律背反させるべきではないとの結論にも達することができた。なお,デ・マウロ教授招へいにより,公開講演会を2度開催(「ソシュ-ル と意味理論」平成3年3月23日,於早稲田大学;「ソシュ-ルと記号学」3月28日,於学習院大学)し,ソシュ-ル言語理論は普版以外の手稿原資料によってこそ解明されるものであることを確認した。研究成果は順に発表する予定である。 ロマンス言語学部門:ロ-マ大学A・ロンカリア教授の指導および協力をえて,主要言語中心のロマンス言語学から少数派ロマンス語(サルジニア語,カタルニア語などの)をも含めたロマンス言語学の方法論の確立を検討する。研究代表者はその目的のため,サルジニア語の現地調査に着手し,すでに第19回国際ロマンス語学会(1989)にてその一部を発表しているが,今年度は同じく3人称単数の動詞語尾の歴史的保守性の追跡調査とともに,サルジニア島中部のヌオロを中心にサルジニア語に特有の1K1の口蓋化を拒む特性に,イタリア語化の波がいかに強力に迫りつつあるかを追求し,さらに基礎語彙の分方言差についても調査を進めたことを報告いたします。
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