研究概要 |
MoS_2基板上にファンデルワールルス・エピタキシャル成長させたMoSe_2超薄膜のSTM観察したところ,格子間隔の異なる基板と成長膜の間の相互作用によって生じるモアレ変調構造が明確に観測され,STS測定をするとモアレ変調の明暗部の電子構造に差があることが判明した。すなわち基板との相互作用により成長膜の電子構造が変調を受け,STMに変調構造が現れることが分かった。このことはファンデルワース・ヘテロ接合によって,面内の電子構造が変調された超薄膜が作成できることを示している。またモアレ変調は格子定数のわずかな差,及び結晶軸方向のわずかなズレを拡大する特徴があるので,STMの変調構造の局所的変化から,成長膜中の極微小部分の歪を評価する手段として使えることを明らかにした。またSi(111)面上のダングリングボンドを水素で終端してファンデルワールス表面化した基板上に,層状物質であるGaSe及び有機物質であるフタロシアニンの超薄膜のエピタキシャル成長に成功した。特に後者の成功は,Si基板上に各種有機物質をエピタキシャル成長できる可能性を開いた。 理論班ではファンデルワールス・エピタキシー系に対する(i)結晶成長の理論及び計算機シミュレーション,(ii)バンド構造及び誘電的性質,(iii)超伝導の新しい機構を中心に研究した。(i)では1成分系では表面ラフニング転移と関係づけられる成長様式の相図の2成分系への拡張,(ii)では超伝導・超伝導STM像とバンド構造の関係並びにプラズモン励起の様相,(iii)では相互作用する絶縁体・金属複合系での普遍的な超伝導の新機構を提案した点が主たる成果である。
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