研究概要 |
1.われわれの開発したポルフィリン合成法に改良を加え、直線上に連結したポルフィリンの量体の合成に成功した。これらの亜鉛錯体の吸収スペクトルは、ポルフィリンの数を反映して連続的に変化することがわかった。 2.亜鉛ポルフィリン(Znp)-フリーベースポルフィリン(H_2P)-ナフタレンジイミド(NIm)-キノン(Q)から成る4成分型モデルを合成し、THF中イオンペア(Znp)^+-H_2P-NIm-(Q)^-が定量的に生成するが、その寿命はZnPとH_2Pの間のスペーサーに大きく依存し、4,4'-ビフェニルのように剛直な構造の場合は、対応する(Znp)^+-H_2P-(NIm)^-に比較して約10倍長くなるが、4,4'-ジフェニルメタンの場合は、逆に短くなる。 3.Znp-オキソクロリン(H_2C)-ピロメリットイミド(PIm)から成る3元系モデルでは、まず^1(ZnP)^*からH_2Cへの励起エネルギー移動により^1(H_2C)^*が生成するが、つづいてZnPから電子を引きぬいて(Znp)^+-Cとなり、最後にPImへ電荷シフトして(ZnP)^+-H_2C-(PIm)^-と生成することを見い出した。最終イオンペアは、0.09の量子収率で生成し、20nsの寿命を持つ。 4.亜鉛ポルフィリン2量体(D)-亜鉛ポルフィリン単量体(M)-ピロメリットイミド(PIm)系モデルでは、^1(D)^*からPImへは電子移動できないために^1(M)^*からDへの一重項励起エネルギー移動が、長寿命電荷分離状態生成の量子収率の低下の大きな原因であった。Mの部分のポルフィリンのβ位の置換基をメチル基からフェニル基に変えたモデルを合成したところ、^1(D)^*からPImへの遠距離電子移動が進行することがわかった。これにより、「光合成反応中心における光子と電子の流れ」をひとつの分子で再現できた。
|