研究概要 |
1.人工酵素の触媒活性を制御するための人工レセプターとして,誘導適合型の包接機能をもつ「タコ」形シクロファン,「鍵と鍵穴」機構により分子を識別できる「かご」型シクロファン,これらの中間的性質をもつステロイドシクロファン,エンテロバクチンモデルとしてのヘキサパスシクロファン,DNAの認識が可能な機能性インターカレータ等を種々分子設計士,それらの合成に成功した。 これらの人工レセプターは,水中において,個々の分子の構造的特徴を反映して細胞質レセプターとしての優れた機能を発現した。さらに合成ペプチド脂質が形成する二分子膜中に埋め込むことによって,人工細胞膜レセプターとしても有効に機能した。特に,光学活性な「かご」型シクロファンを二分子膜に組み込むことによって,人工酵素の基質である疏水性アミノ酸類に対する不斉認識能の発現が認められた。 合成ペプチド脂質が形成する二分子膜ベシクルに,疏水性ビタミンB_6誘導体と金属イオンを組み込んで構成した二分子膜型人工酵素は,トランスアミナーゼ,トリプトファンシンターゼ,およびアルドラーゼとしての機能を発現し,温和な条件下の水中において,立体選択的かつ触媒的なアミノ酸変換反応が可能になった。 疏水性ビタミンB_<12>誘導体を組み込んだ二分子膜型人工酵素は,メチルマロニルCoAムターゼ,グルタミン酸ムターゼ,およびα-メチレングルタル酸ムターゼとしての機能を発現した。さらに,基質活性化の助触媒を組み合わせることによって,炭素骨格の組み替えをともなう異性化反応を触媒的に進行させることが可能になった。 トランスアミナーゼ活性を有する二分子膜型ビタミンB_6人工酵素と,グルタミン酸ムターゼ活性を有する二分子膜型ビタミンB_<12>人工酵素間で連係機能の発現が可能であることを明らかにした。
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