研究概要 |
本年度は5年計画の第2年度であり、前年度に引続き研究環境の整備を進めるとともに、本研究の最初の重要な成果が得られた。前者については、第一に、認知記憶課題制御の為のUNIXグラフィクスワ-クステ-ション構築が完了した。第二に、最近の遺伝子発現制御研究に対応する為、長期記憶におけるimmediateーearly gene発現を検出する実験系の構築を開始した。平成4年度にも引続き整備を進める予定である。本年度に得られた主要な成果は、次の通りである。 1.「対連合課題paired association task」に対応する長期記憶ニュ-ロンを発見した。これは、ヒトの認知的長期記憶に普遍的なニュ-ロン表現を見いだした重要な成果であり、英国科学雑誌NATUREに発表された(Sakai,K.& Miyashita,Y.,Neural organization of the longーterm memory of paired associates,NATURE 354,152ー155,1991)。この課題では、12対の図形をコンピュ-タグラフィックスにより生成し、サルに記憶させる。下部側頭葉皮質において、各試行の手がかり図形提示期に選択的に興奮するニュ-ロン活動を記録したところ、多くのニュ-ロンは2ー3枚の図形に対してのみ強い反応を示した。これらの最適図形は幾何学的に類似しているよりむしろ対連合図形である確率が有意に高いことが示されたのである。 2.フラクタル図形アルゴリズムについては完結した論文として発表した(Miyashita et al.,Generation of fractal patterns for probing the visual memory,Neurosci.Res.12,307ー311,1991)。コンピュ-タグラフィックスの記憶研究への応用として重要な成果である。 3.共焦点蛍光顕微鏡は、脳切片とくにthin sliceと呼ばれる標本においてwholeーcell patchーclamp法と併用する点に威力を発揮している。既に、グルタミン酸を伝達物質とするシナプスにおいてはシスプス長期増強・抑圧が脳内でかなり普遍的現象であることを示す結果を得ている。
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