研究概要 |
遺伝子改変・遺伝子発現などの分子生物学的アプロ-チと三次元クライオ電子顕微鏡法による分子超微細構造解析を結び付けた新しい研究法である部位特定的重原子標識電子顕微鏡法(SHALEM:Siteーspecific Heavy Atom Labelling Electーron Microscopy)と時間分解能電子顕微鏡法を開発するために、下記の研究計画を実施した。 (1)ディクチオ型粘菌での改変ミオシン遺伝子の発現 ディクチオ型細胞性粘菌(Dictyosterium discoideum,キイロタマホコリカビ)を真核細胞遺伝子発現システムとして採用し、ミオシン分子上の特定のアミノ酸残基をシステイン残基に置換するように変異を導入した。変異を入れる箇所としてはミオシン頭部ドメイン上の興味深い3カ所(N末端、C末端、アクチン結合部位近傍の20Kー50K junction)を選んだ。この変異ミオシン遺伝子をアクチン遺伝子のプロモ-タ-とタ-ミネ-タ-につなぎ、形質転換ベクタ-pnDeIに挿入した。これら変異ミオシン遺伝子のうちN末端を変えたものについては粘菌細胞で発現させ、精製することに成功した。効率、変異細胞の安定性などを検討している。 (2)ケイジド化合物をもちいた時間分解能クライオ電子顕微鏡法の開発 CagedーATPやCagedーCa等のケイジド化合物を、Nd・YAGレ-ザ-からの355nmのパルス光で照射することにより反応を開始し、急速凍結することにより反応を停止する。時間分解能を持たせる為に、落下中の試料に同期させてレ-ザ光を照射する。光センサ-により試料の位置を検出し、一定時間後に(この時間は可変である)レ-ザ-光を発振させる。凍結時間は、熱電対の熱起電力の変化でモニタ-する。これらの制御および情報処理は、コンピュ-タで行い、光分解より20ミリ秒後のクライオ電子顕微鏡像を得ることに成功した。
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