研究概要 |
部位特異的重原子標識電子顕微鏡法のためにディクチオ型粘菌のミオシン・アクチン遺伝子に部位特異的変異を導入した後にディクチオ型粘菌に形質導入し発現させた。ミオシンの場合はAsp5またはAla621にシステイン残基を導入したほかミオシン頭部重鎖C末端にGlyProSerIleValHisArgLysCysPheという部分を付加したミオシン頭部の作製も行い精製した。アクチンの場合は正負の荷電アミノ酸を中性アミノ酸に変えた。ミオシン数百μgを精製できたのでシステイン残基に蛍光標識出来ることを確かめ、一次構造上での位置を決定しつつあり、モノマレイミドー金クラスタ-の標識を検討中である。時間分解能クライオ電子顕微鏡法の開発が達成され、レ-ザ-光分解反応開始から5ミリ秒後の電子顕微鏡像を得ることが出来、数百ミリ秒後までを追跡することが出来た。低電子線量での画像記録のため、イメ-ジング・プレ-トを用いて、これまでの十分の一の電子線量での画像記録に成功したところ、これまで観察出来なかったトロポミオシン準結晶の中の分子像が見えるようになった。アクチン分子のサブドメイン1の酸性残基の機能を検討するために、ディクチオ型粘菌アクチンのAsp24ー25,Glu99ー100,Glu363ー364をそれぞれヒスチジン残基に置き換えた変異アクチンを発現、精製した。これらについて、ミオシンATPaseの活性化、滑り速度、力発生について酸性残基の機能を検討した。その結果Asp24ー25はATP存在下でのアクチン・ミオシンの相互作用に必須であり、Glu360ー361またはGlu363ー364は相互作用には不必要であり、Glu99ー100はなくても滑り運動は可能である事が分かった。ミオシンの機能を検討する為に、遺伝子保存領域(450ー505残基)のGlu467,476,497をAlaに置換した変異ミオシンを発現・精製した。これらの保存領域はミオシンATPaseのアクチンによる活性化に関与しているらしいことが分かった。
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