部位特異的重原子標識電子顕微鏡法のためにディクチオ型粘菌のミオシン遺伝子に部位特異的変異を導入し重鎖のN端付近にシステインを導入し、ディクチオ型粘菌で発現させ、Undecagold-monomaleimideで標識し、その位置を三次元的に決定することに成功した。この構造情報は、アクチンとミオシンのX線構造デ-タと電子顕微鏡からの三次元再構成デ-タを比較する上で重要なものである。重鎖の軽鎖結合部位であるC端部分を削り取ると発現量が増え、数mgの変異ミオシンを精製できたことも、この成功にとって重要であった。このミオシンはATP分解活性やアクチン結合能は保たれており、アクチンの滑り運動や張力発生を起こす能力もあった。そこで、ミオシンの機能にとって、軽鎖および軽鎖結合部位は必須ではないとの重要な結論を得た。収縮しつつある筋肉のクロスブリッジを、筋肉の長軸方向から観察することに成功した。収縮中のクロスブリッジは、細長く伸びており、多様な曲がりかたをしており柔軟性をもつようにみえ、これまでに知られている硬直状態のものと異なっており、新しい構造をとっていることが見いだされた。ミオシンはフィラメントを形成すると、二方向性をもっているが、いずれの方向でもアクチンフィラメントと相互作用出来る事は既に知られているが、我々は、順方向と逆方向で速度が異なるのは、ミオシン分子自身の性質であることを見い出した。これは滑り運動の分子的機構を考察する際に、重要な鍵を与える。ディクチオ型粘菌の新しい選択マ-カ-としてブラスティシヂン耐性マ-カ-を持つものを開発した。ディクチオ型粘菌のアクチン遺伝子を改変し、滑り能力の変化を調ベた。アスパラギン酸24/25およびグルタミン酸99/100をヒスチヂンに変えると、滑り運動を起こせなくなることを見い出した。
|