研究概要 |
本研究の初年度である平成2年度は,(1)卵の成長や成熟に関わるステロイド代謝酵素遺伝子のクロ-ニング,(2)卵成熟促進因子の化学的実体の解明,及び(3)精子形成の細胞培養系の確立を重点的に実施した。 <(1)ステロイド代謝酵素遺伝子のクロ-ニング>___ー: ヒトとブタのcDNAをプロ-ブとして,ニジマスの卵巣のcDNAライブラリ-より,コレステロ-ル側鎖切断酵素,17αー水酸化酵素,ライエ-ス,芳香化酵素,20βーステロイドー水酸基脱水素のクロ-ニングを行った。その結果,芳香化酵cDNAのクロ-ンを単離し,その全塩基配列を決定した。また,ノ-ザンハイブリダイジェ-ションにより芳香化酵素の卵濾胞細胞での発現が卵黄形成期に高く,卵成熟期には著しく低下することが判明した。また,17αー水酸化酵素のcDNAについても全塩基配列の決定をほぼ終えるとともに,他の酵素についてもいくつかのクロ-ンを得て,現在塩基配列の決定を行っている。 <(2)卵成熟促進因子の化学的実体の解明>___ー: 4種のカラムクロマトグラフィ-を用いてコイ(魚類)の成熟卵から分子量約100kDaの卵成熟促進因子を精製し,それがcdc2キナ-ゼとサイクリンBの2種のタンパク質の複合体であることを明らかにした。さらに,これら各々のタンパク質及びサイクリンAのcDNAを単離し,その全塩基配列を決定した。また,これらのcDNAクロ-ンをもとにして大腸菌で3種のタンパク質を合成し,それぞれのモノクロナル抗体を作製した。これらを用いてウエスタンブロットで分析すると,卵成熟時にcdc2キナ-ゼ量に変動はみられなかったが,サイクリンB量は分裂中期に最大で,卵の付活後には急減した。 <(3)ウナギ精巣の細胞培養系の確立>___ー: 養殖ウナギの未熟精巣を遠心分離により,精原細胞とセルトリ細胞の分画とに分離することができ,各々の分画を無血清培地で一週間培養することが可能となった。
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