研究概要 |
本研究の第三年度である平成四年度は以下の三点について研究した。 (1)減数分裂(精子形成)の開始機講:サブトラクション法により,生殖腺刺激ホルモン(HCG)投与1日後のウナギ精巣で発現を促進,抑制される遺伝子を数個ずつ単離することができた。そのうち発現を促進する遺伝子としてアクチビンBと3β-ステロイド水酸基脱水素酵素遺伝子を単位し,それらの塩基配列を決定した。アクチビンBは,HCG投与後1日後に精巣のセルトリ細胞に多量に発現し,6〜9日間発現は維持された。HCG処理により抑制される遺伝子に関しては現在塩基配列を解析中である。 (2)卵成熟誘起ホルモンの生成,作用の分子機構:今年度も引き続き,ニジマスのステロイド代謝酵素遺伝子のクローニングを行い,新たにコレステロール側鎖切断酵素,3β-HSDのcDNAを単離し,それらの全塩基配列を決定した。さらに,メダカのステロイド代謝酵素遺伝子のクローニングも開始し,芳香化酵素のゲノムDNAの塩基配列を決定するとともに,転写開始点(2カ所)を決定し,それのプロモーター領域を明らかにした。これまでに得たニジマスとメダカのcDNAをプローブとして,卵形成と成熟期の卵胞のmRNA量の変動を調べているが,これまでに卵成熟期直前の顆粒膜細胞でGTHにより芳香化酵素のmRNAが急減し,かわって20β-ステロイド水酸基脱水素酵素のmRNAが急増することが明らかになった。 (3)卵成熟促進因子(MPF)の生成と作用の分子機構:今年度はMPFの活性化・不活性化機構を重点的に調べた。17α.20β-DPの処理によりキンギョのMPFはcdc2キナーゼの161番目のスレオニン,及びサイクリンBのセリンガリン酸化される。変異サイクリンを用いた実験からサイクリンBのセリンのリン酸化はMPFの活性とは直接には関係しないことが明らかになった。また,MPFの不活性化はサイクリンBの分解で起こる。
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