研究概要 |
1.研究成果:生物活性があるリコンビナントAFPが十分量得られる系を確立した。産物はエストロゲン依存腫瘍の増殖を抑制した。改変AFPを作製しエストロゲン結合能などの機能部位を特定した。AFP糖鎖にはその由来によりレクチンとの反応性に差異がある事を明らかにし、その簡易測定法を開発し肝硬変からヘパト-マ発生時の早期診断を可能とした。CEAの類縁抗原の分子種の数、分子構造をモノクロナル抗体を用いるなどタンパクや糖レベルならびにDNAクロ-ニングレベルで明らかにした。CEAおよび類縁抗原の転写、翻訳,細胞内局在、分泌の様式を明らかにしその産生の癌特異性につき検討した。大腸癌抗原A7に対するモノクロナル抗体と抗癌剤の複合体に制癌効果がある事を臨床的、実験的に示した。放射標識抗ras抗体の腫瘍への局在を認めた。MnーSODのELISAを開発し上皮性卵巣癌のマ-カ-となる事を示した。 2.考察及び反省:AFP及びCEAは臨床的に最も多用されている腫瘍マ-カ-である。AFPの発現がなぜ腫瘍と胎児に特異的であるか?,AFPの生物学的機能はどのようなものであるか?などの解明を目的としていたが前者については十分な研究を進め得なかった。後者についてはその手段となるリコンビナントAFPを用いる実験系を開発した。エストロゲン結合能を付与したヒトAFPによる制癌は是非行ってみたい課題である。AFPの糖鎖の癌性変化とその簡易な測定法を開発した。臨床応用と共にその機序の研究が開発された。CEAについてはDNAクロ-ニングなどの分子生物学研究により癌胎児性は高くない事を明らかにした。しかし患者血中CEAの増加には癌特異性があり、その機序について興味ある結果が得られた。MnーSOD,ムチン抗原(Musell,YH206)の測定法を開発したが一定の診断価値を認めた。放射免疫局在診断,抗癌剤結合抗体による制癌の研究も有望な結果を得た。
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