研究分担者 |
本間 良夫 埼玉県立がんセンター研究所, 主任研究員 (70142114)
石井 俊輔 理化学研究所, 分子遺伝学研究室, 主任研究員 (00124785)
井川 洋二 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (40085618)
大石 道夫 東京大学, 応用微生物研究所, 教授 (00126004)
野田 亮 理化学研究所, 筑波研究センター, 研究員 (30146708)
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研究概要 |
本研究では,癌細胞のみでなく正常細胞の増殖制御に働き,また細胞分化のプログラミングの段階で大きな役割を果すと思われる癌遺伝子の機能を分子レベルで明らかにすることを目的としている。研究代表者の帯刀は,試験管内で分化誘導できる赤白血病細胞(MEL細胞)の分化におけるcーmyc癌遺伝子の機能を,人工変異遺伝子の細胞への導入により解析した。その結果,cーmyc遺伝子は,分化のコミットメントと分化特異的遺伝子発現の二段階で制御機能をもち,両者の機能は,cーmyc蛋白の機能ドメインとして分割されることを示した。また,その制御においては,cーmycと他の転写因子との相互作用が重要であることが分ったので,現在,cーmycと相互作用する核内因子の探索を行なっている。大石班員は,同じくMEL細胞分化において機能する分化因子がチロシンリン酸化により制御を受けることを見出し,その制御因子の精製を行なった。井川班員は,同じくMEL細胞の分化においてcーmyb遺伝子が重要な働きをもつことを示し,帯刀らの結果と合わせてcーmyc,cーmybといった核内癌遺伝子のネットワ-クが重要であることを明らかにした。石井班員は,cーmyb蛋白が,転写因子として働き、その機能ドメインはDNA結合,転写制御などに分割できることを明らかにし,cーmybが標的とする遺伝子を探索している。野田班員は,神経細胞へと分化するPC12細胞が,ras癌遺伝子によりCAMPを介して新たな蛋白のリン酸化が起き,機能発現へと向かうことを見出し,この新たな蛋白がチロシンハイドロチシラ-ゼであると同定した。このように,正常な分化のプログラミングにおいて,いくつかの癌遺伝子が重要な働きをしていることを明らかにし,またその働きの分子機授を解明した。
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