研究概要 |
低線量全身照射が転移形式に対してどのような抑制効果を示すかということの検討は本研究の今年度の重要な研究課題の一つであった。そこで今年は自然に転移が多発するマウス腫瘍系を造りそれを実験材料として種々の研究が行なわれた。すなわち一回の全身照射によって転移は有意に抑制されることが判り,その至適線量は0.15〜0.20Gyであることが明らかになった。更にこの転移抑制効果がBRMとの併用によって高まるか否かを検討した。BRMとしてOK432との併用実験を行なったがOK432は低線量全身照射の48時間前に投与された場合に最も有効であり相乘的効果が認められた。しかし全身照射後にOK432を投与しても相乘的効果は認められないことが判った。一方臨床研究では昨年に引続き悪性リンパ腫に対する低線量全身照射の効果が検討され,治療症例が増加することによって以下のことが明らかになりつつある。すなわち,新鮮例の治療成績は良好な結果を得ているが,再発例の治療成績は生存期間が短かく予後が不良であった。再発例で特に前治療として化学療法が強力に行なわれた症例ではその強い副作用をも考慮すると低線量全身照射による治療の適応外であるとの結論が出た。全身照射による血液の変化も新鮮例では,特に急激な減少を示めすものはみられなかった。リンパ球のサブセットの変動をみると低線量全身照射によってヘルパ-T,活性化ヘルパ-/インデュ-サ-T,ヘルパ-インデュ-サ-T細胞の増加を認める症例が多く,臨床的にも低線量全身照射が腫瘍免疫を賦活させている可能性を示した。今年度は更に全身照射の適応疾患の拡大を考え,子宮頸癌,食道癌,肺癌,頭頸部癌について全身照射と局所照射による治療トライアルを開始している。
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