研究概要 |
がん家族集積性の差に関する実験的及び疫学的な追跡から発がん感受性に差をもたらす要因を明らかにする事を目的として研究を行った。 疫学的にはがん死亡率の低い岩手県○町に於ける国保加入家族について調査を行った。対象者1194名の3等親以内のがん発生者は男女それぞれ213名,206名で,このうち280名に家族集積性がみられた。血族での家族集積性は男同士より女同士で高く、姻戚関係では、男と妻の実家とのがんの集積がみられた。この事から、がんの家族集積性が食事摂取習慣の継承であることが示唆された。食事中変異原性関連食品の摂取バランスを60歳代男女で比較すると、男女とも集積性のみられる家族では集積性のみられない家族に比し、陽性化食品の摂取傾向が強く、かつ、本人に集積性がなくとも妻方に家族集積性のみられる場合、家族集積性のみられる男子よりもさらに陽性化食品摂取傾向が強かった。さらに、がん家族集積性には発がん部位の集積性も強くみられ、薬物代謝酵素の誘導能の関与を示唆するものであった。 実験的には、これらの事をふまえて食事摂取バランスが陽性化食品摂取傾向にあり、かつ、がんの家族集積性の異なる20家族を選んだ。これら各家族に研究協力を要請し、18家族については協力を得られたが、2家族では採血の延期を申し込まれ、他の16家族の就学未満の小児を除く全員68名から採血した。これら血液は血清およびリンパ球を分離し、血清については種々の臨床検査項目を測定し、リンパ球についてはmRNAを抽出・精製した。これら対象者はがんの家族集積性からみて、薬物代謝酵素高誘導者26名、低誘導者24名およびこの中間者(両親が高誘導型と低誘導型)18名に分類された。薬物代謝酵素量を反映すると考えられるコレステロ-ル量や薬物の有効時間等では著名な差は得られなかった。現在、Pー450誘導・Rb遺伝子発現の実験を進めている。
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