PEBP4は、未分化F9細胞で転写抑制性に作用する、シスエレメントに結合する因子として同定された。本因子はF9細胞のみならず、種々の分化した細胞にても発現している。本因子による転写抑制作用の機構、及び細胞分化・癌化における意義を解明する目的で本研究が行なわれた。(1)PEBP4の分子的性状。ラット肝の核抽出液を出発材料として用い、通常の生化学的分離法・塩基配列特異的DNAアフィニティクロマトグラフィ-により、PEBP4を精製した。精製標品のSDSーPAGEにより、分子量60kD・65kDの2つのポリペプチドが、各々等モル比で主要バンドとして観察された。一方ゲル3過においてPEBP4活性は、分子量130kDの位置に溶出された。またホルムアルデヒド処理により、PEBP4をDNAに架橋すると、SDSーPAGE上やはり分子量130kDの位置にバンドが検出された。以上からPEBP4は、60・65kDの2つのポリペプチドのダイマ-であると考えられる。(2)PEB14のDNA塩基配列の認識モ-ドについて。種々の変異を導入したDNAをプロ-ブとして、PEBP4の結合を検討した結果、PEBP4の認識配列はC/TCAG(N)_6C/TCAGであると判明した。C/TCAGのモチ-フは2回くり返す必要があり、一方のモチ-フのみに変異を導入すると、PEBP4は結合できない。また介在配列はどの塩基でもよいが、Nの個数は正確に6でなければならない。従って(1)で述べたダイマ-の各々の成分が、1つのモチ-フを認識していると考えられる。 現在PEBP4をコ-ドする遺伝子のcDNAクロ-ニングに向けて、引き続き努力しているが、(1)(2)で述べた分子的性状・塩基配列認識モ-ドの点が、PEBP4はステロイドホルモン・レセプタ-と類似した性質を有することが示唆され、その生物学的意義は少さくないと予想される。
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