研究概要 |
劣性高発がん性遺伝病である色素性乾皮症(XP)とアタキシア・テランジェクタシア(AT)細胞を用いて実験を行なった。シャトルベクタ-pZ189に紫外線照射し、A、C、F群XPと正常細胞にトランスフェクトして突然変異の頻度・種類を解析した。またpZ189にガンマ線照射してAT細胞にトランスフェクトした。 紫外線照射後のpZ189生存率は、XPーA細胞が最も低く、正常細胞が最も高く、XPーC,F細胞は正常細胞とXPーA細胞の中間であった。pZ189の紫外線突然変異率は、逆に、XPーA細胞をレシピエントとした場合最も高く、正常細胞が最も低く、XPーC,F細胞は正常細胞との中間であった。各細胞につき約70個の突然変異体の塩基配列を決定した結果、transition突然変異が全ての細胞において多く(62ー84%),またそれは全てのXP相補性群細胞で正常細胞より有意に多かった。全ての細胞で、transitionのうち大部分がG:C→A:Tの変化であった。transversionのうち大部分はG:C→T:A、G:C→C:Gの変化であった。変異cytosineの5'側塩基にはpyrimidineの存在が有意に高かった。XP相補性群間では突然変異に有意差はなかった。またAT細胞におけるpZ189のガンマ線誘発突然変異頻度は正常細胞と差がなかった。 これらの結果は各XP相補性群細胞の持つ紫外線感受性と突然変異誘発特性を反映し、細胞のDNA修復能が導入pZ189に対しても働くことを示す。紫外線による主損傷であるチミンダイマ-は突然変異の原因ではなく、シトシンの損傷が突然変異の原因である可能性を示す。またpZ189を用いた誘発突然変異検出系は、高発がん性遺伝病細胞における分子レベルの突然変異の質的、量的差異を明らかにできることがわかった。
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