研究概要 |
ヒト癌細胞と反応するモノクロ-ナル抗体を放射性同位元素(RI)で標識し、癌細胞を移植したヌ-ドマウスを用いて、認識する抗原の正常細胞、癌細胞での発現を検討するとともに、モノクロ-ナル抗体の分布より癌の画像診断、治療に適した抗原、モノクロ-ナル抗体を選択した。大腸癌の画像診断には、CEAに対するモノクロ-ナル抗体のうちグル-プVbに属する抗体が、卵巣癌にはCA125に対するモノクロ-ナル抗体のうち145ー9、196ー14と呼ばれる抗体が、乳癌にはcーerbBー2癌遺伝子産物に対するモノクロ-ナル抗体(SV2ー61γ)が最も高い腫瘍/正常組織比を示し、画像診断、治療に適していると考えられた。CEA、cーerbBー2に対するモノクロ-ナル抗体を用いて、インビトロにおける癌細胞表面の抗原発現の程度と、RI標識モノクロ-ナル抗体のインビボでの腫瘍集積性、腫瘍/正常組織比は正の相関関係を示した。臨床応用に適したモノクロ-ナル抗体を選択するとともに、本法により癌遺伝子の過剰発現の程度をインビボで画像化することができた。 これまで確立された膨大な数のモノクロ-ナル抗体のうち、インビボに利用されたのはごく一部の抗体のみである。cーerbBー2癌遺伝子の過剰増幅は乳癌、神経芽細胞腫患者の予後不良と相関することが知られているが、本法により癌遺伝子の過剰発現をインビボで画像化することができるため、癌遺伝子の臨床的、生物学的意義の解明に役立つ。「医学研究施設内で作られたRI標識モノクロ-ナル抗体の臨床利用に関する指針」(Radioisotopes 39:597ー599,1990)に添って、モノクロ-ナル抗体の安全性試験を行った後、RI標識モノクロ-ナル抗体を用いる大腸癌、卵巣癌、乳癌の画像診断の臨床的応用に発展させる。
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