研究概要 |
C3Hマウス大腿部皮下に移植した平均直径8ー10mmのSCCVll腫瘍を用いて実験を行った。尾静脈よりデキストラン包合マグネタイト(鉄1mm/ml,デキストラン56mol/ml、コア径7.3nm、包合体径73nm)を0.01ml/g注入し、注入時より腫瘍部に配置されたNdーBーFe永久磁石にて腫瘍へのタ-ジェティングが行えるか否かを、組織内の鉄量測定にて評価した。腫瘍内の鉄量は投与後10分でコントロ-ルの約5倍に増え、この値は1.0Tの磁場負荷にて更に増大した。この差は磁場負荷時間を30分に延長するとより著明になった。この効果は0.2Tの磁場では認められなかった。粒子径が大きい(164nm)マグネタイト製剤AMIー25についても検討したがタ-ジェティング効果は得られなかった。 シスプラチン封入温度感受性リポソ-ムのタ-ジェティング効果を高めるべくマグネタイト微粒子を内部に封入したマグネテイックリポソ-ムを作成した。温度感受性は良好であったが、マウス実験において十分なタ-ジェティング効果(組織内の鉄量測定、tumor growth delay assayで評価)は得られなかった。 本研究にて、デキストラン包合マグネタイトと1.0T磁石の組合せで一定の癌タ-ジェティングが行えることが明かとなった。今後、マグネタイトが取り込まれ易い網内系での薬物動態、腫瘍内でのマグネタイト粒子の分布の検討が必要と考えられる。タ-ジェティングの成否に関して、粒子径、分散状態など製剤側の検討も必要と思われる。
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