研究概要 |
ヒト神経芽腫は,小児固形悪性腫瘍の中で最も頻度が高い。臨床経過中に腫瘍の分化・成熟がおこり,腫瘍の自然退縮がみられることがある。in vitroでは分化誘導が可能である。そこでNBの分化・成熟と増殖の機序を明らかにするため,化学物質,Interferon(IFN),Interleukinー6(ILー6),Tumor necrosis factor(TNF),Transforming growth factor(TGF),Fibroblast growth factor(FGF),Activinなどのサイトカインと増殖因子を用いて,in vitroでNBの分化に及ぼす影響を検討した。 1.NBの神経とシュワン細胞への分化:in vitroでretinoic acid,ポリプレイン酸とサイクリックAMPで処理すると,Neurofilament陽性の神経突起形成をみ,NBは神経細胞に分化した。bromodeoxyuridine処理ではS100蛋白(β),CNPaseの活性が増加し,シュワン細胞への分化が認められた。神経細胞とシュワン細胞への分化にともないNーmycとcーsrc発現量は変化し,NBの2方向への分化過程にNーmycとcーsrc両遺伝子が関与していることが示された。IFNでは検索したNB株(n=5)のうち3種で神経細胞への分化が誘導され,HLA class II抗原(HLAーDRとーDP)が誘導された。IFNにTNFを加えるとHLA class II抗原の誘導は増強された。 2.NBの平滑筋細胞への分化能:我々の研究室で継代培養中の3種のNB株は,紡錘形の神経細胞のみならずflatーepitherialな細胞(別名S細胞)を混ずる。このS細胞は,αーsmooth muscle actinやdesminなどの平滑筋細胞のマ-カ-を持つことを蛍光抗体法,Western blot法とNorthern blot法で明らかとした。培養中に神経細胞は平滑筋細胞と考えられるS細胞にinterconversionするがそのメカニズムは不明である。そこでTGF,FGF,Activinなどの中胚葉誘導因子でNBの平滑筋細胞の誘導を試みたが,その誘導は不可能であった。
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