研究概要 |
分子量8万の酸性蛋白(80K蛋白)は、プロテインキナ-ゼCの顕著な細胞内基質として知られている。我々はこの蛋白質をヒト扁平上皮癌細胞Ca9ー22株から精製することを試み、熱処理、硫安分画、MonoQカラム、proPRCカラム、ゲル瀘過などを用いて単一標品にまで精製することに成功した。その過程で、80K蛋白には分子量を若干異にする2種類の分子種があることを見出し、80kーLおよび80kーH蛋白と命名した(Hirai and Shimizu,1990)。また、精製したプロテインキナ-ゼCの3つのサブタイプ(I、II、III)で<in vitro>___ーのリン酸化反応を行ったところ、この2種類の基質は いずれもCa^<2+>およびリン脂質依存的にSer残基にリン酸化を受けた。80kーL蛋白はタイプIIIキナ-ゼCの優先的基質であり、80kーH蛋白はタイプI、IIキナ-ゼCによってより効果的にリン酸化されることが明らかになった。さらに、80kーH蛋白のcDNAをクロ-ニングしその塩基配列を解析した結果、特徴的な蛋白構造が推定された(Sakai et al.,1989)。一方、80kーL蛋白はそのcDNAの塩基配列からウシ脳由来のMARCKS蛋白と同等の蛋白質であることも最近明らかにした(Sakai et al.,in preparation)。今後は、これら2種類の80K蛋白のシグナル伝達における役割を追究していく。
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