研究概要 |
我々はヒトの上皮細胞の多段階発癌を考えるために2つの培養系を開発した。大腸腺腫細胞前癌病変として、また、子宮頸部上皮細胞は正常上皮と考えている。 家族性大腸腺腫の患者より高度に分化した緩慢な増殖性を有する、これまで報告された癌遺伝子の増幅や突然変異、また、染色体異常の全くみられない上皮細胞系(FPCKー1)を確立した。 癌研究所付属病院の子宮筋腫の手術材料から常に1症例について10^7個以上の細胞を得ることのできる正常ヒト子宮勁部上皮細胞培養系を確立し、その基本性格を分析した。この培養系の開発に当たりカルシウムイオン濃度と培養条件(増殖因子の組み合わせ、組織培養法の応用)を工夫し、従来の上皮細胞培養系と異なった考えを用いた。これらの細胞は正常細胞の一つの指標である限られたガラス器内での寿命を有する上皮細胞であることを確認した。 非常に正常に近いと考えられる(Vogelsteinらの仮説に登場するような遺伝子の変化をまったく持たない)ヒト大腸腫腫細胞系はこれまでに報告のないユニ-クなものである。また、正常ヒト子宮勁部上皮細胞培養系も、従来困難であった正常ヒト上皮細胞の供給を確実にし、将来の分子生物、生科学的解析にも道を開くものである。これら用いて多段階発癌の解析を行う。研究方法として、1.上皮細胞の増殖動態を調べる、2.遺伝子および染色体の異常を調べる(癌遺伝子、癌抑制遺伝子)3.外から導入した遺伝子の発癌への関与を調べる(ras,HPV,p53)。
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