高分化がん、低分化がん、未分化がんという病理学的分化度分類が、浸潤・転移能を含むがんの生物学的悪性度と良く相関することが知られている。そこで、このヒトがんの分化度と細胞接着分子の発現異常の関連を明らかにすることを本研究の目的とした。 細胞接着分子を特異的に認識するモノクロ-ナル抗体は、モノクロ-ナル抗体が細胞接着を阻止する機能を持つことでスクリ-ニングして分離した。これまでに、ヒトPー、Eーカドヘリン、インテグリンα_2α_4β_1β_4に対するモノクロ-ナル抗体を分離している。 ヒトがんの中でも細胞接着の不全の目立つ低分化がんの多い胃がんを対象に、Ca^<++>依存性細胞接着分子カドヘリンの発現を検討した。検索症例は手術で切除された54例で凍結切片を作製し、免疫組織化学的に検索した。Eーカドヘリンは分化型がんならびに細胞結合性を示す未分化がん全例に均一に発現していた。バラバラに増殖する未分化がんでは、分化型がん同様Eーカドヘリンを発現するもの(19例)と、Eーカドヘリンの発現を失うもの(4例)とがあった。免疫ブロットによる分子量の検索では、Eーカドヘリンの大きな異常は見い出されなかった。また、胃がんでは正常胃粘膜では増殖帯にわずかに発現するPーカドヘリンが強く発現するものがあった。 結論として、胃がんが低分化になる場合において、カドヘリンの発現異常を伴うものと、それ以外の機序で細胞接着の異常が起こるものの2種類あることが解明された。
|