現在ILー2レセプタ-には少なくとも2種のサブユニット(α鎖、β鎖)の存在が知られている。本研究ではILー2レセプタ-の構造と機能の解明を目的とし以下の解析を行った。 <1.ILー2レセプタ-複合体の解析:>___ー遺伝子導入によりヒトT細胞に発現させたヒトβ鎖は中親和性ILー2結合を示すが、線維芽細胞に発現させたβ鎖には期待されるILー2結合が認められない。しかし線維芽細胞にα鎖とβ鎖を同時に発現させると、高親和性レセプタ-が再構成された。これらの結果は、高親和性ILー2結合にはα鎖とβ鎖で十分であること、および中親和性レセプタ-にはβ鎖とリンパ系細胞に存在する他の細胞成分の相互作用が必要なことを示している。また新たに作製した抗マウスβ鎖抗体を用いた解析の結果、マウスβ鎖も中親和性レセプタ-として機能するためには他の細胞成分を必要とするがヒトβ鎖とはILー2結合親和性の調節機構が異なることが示唆された。 <2.β鎖を介するILー2シグナル伝達の解析:>___ーヒトβ鎖を、α鎖・β鎖をともに発現しないILー6依存性マウスB細胞株に遺伝子導入した。得られた細胞株は中親和性ILー2レセプタ-の発現とともに、ILー2依存性の細胞増殖を示した。この結果は、β鎖がα鎖の非存在下にILー2の増殖シグナルを細胞内に伝達し得ることを示す。またILー2とILー6のレセプタ-結合以降の刺激伝達経路は少なくとも一部が共通である可能性が示された。 <3.可溶性β鎖の作製とその意義の検討:>___ー細胞外領域のみからなるヒトβ鎖を遺伝子工学的に作製した。得られた可溶性β鎖の分子量は37KdでcDNAから計算される値と一致し、ILー2に対してきわめて弱い結合親和性のみを示した。また今回作製した可溶性β鎖にはILー2反応の阻害活性は見いだされなかった。
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