転移制御のin vitroでの解析を血管内皮細胞の培養系において行ない、癌細胞のautocrine増殖因子の中でも特に重要な役割をはたすと考えられるTGFβの浸潤・転移の成立における機能を明らかにすることを目的に、TGFβレセプタ-の性質および発現とTGFβ感受性との関連を検討した。ヒト臍帯静脈の内皮細胞(HUVEC)は、細胞外基質の添加の有無によってTGFβ感受性が異なり、また、TGFβ1とβ2とに対して異なった反応を示すという特色あるTGFβ感受性を示す細胞である。HUVECには細胞あたり8500個程度の高親和性TGFβ1レセプタ-が存在した。低親和性レセプタ-は検出されなかった。 ^<125>I標識TGFβ1と特異的に結合する細胞表層成分は、Massagu^^´eらの分類のタイプIIに相当する95kDがもっとも、次いで170〜190kDの成分が多く、タイプIに相当する65kDはきわめて少なかった。またHUVECはTGFβ2に対しても高い感受性を示すにもかかわらず、TGFβ2はいずれのβ1特異的結合成分とも結合しなかったので、TGFβ2はβ1とは異なるレセプタ-を介して作用すると考えられる。170〜190kDの成分は、還元による分子量変化およびTGFβ2との結合性から線維芽細胞などのタイプIIIレセプタ-やα2マクログロブリンとは異なり、新しいTGFβ1レセプタ-ないしは結合蛋白である可能性が示唆された。3種のβ1レセプタ-/結合蛋白は細胞外基質添加の有無によらず発現しており、結合量にも有意の差は認められなかったので細胞外基質の添加による増殖阻害の回避はレセプタ-以後の段階の問題であると考えられた。HUVECはTGFβレセプタ-の研究に有用な細胞であると考えられるので、細胞表面に対する単クロ-ン抗体を作成し、各TGFβ結合成分に対する抗体を得て解析を進めることを計画している。
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