発災時における被害情報の正確かつ迅速な収集と伝達は、適格な災害対応の基礎となる。しかし、過去の災害の災害事例の分析によると、発災直後から20分〜30分間は、行政の態整が充分整わず情報の空白や、逆に、軽重とり混った情報の洪水状態が発生し適格な災害対応のネックとなっている。本研究はこうした実情分析をふまえて、災害現場にいる市民自身を情報発信者として位置づけ、その能力向上を計るための訓練プログラムの開発を目的として、情報収集伝達システムの現状、既存訓練プログラムの実態と問題点把握、新しい訓練プログラムのニ-ズの整理、プログラムの基本的枠組みの設計などを行ったものである。 まず既存の災害情報収集伝達システムの現状分析では.都道府県防災行政無線、同報無線の整備状況を.静岡県.東京都、墨田区等で調査すると共に、具体的事例として、昭和61年の台風10号による小貝川水害を事例として情報の収集.伝達実態、及びその時の住民の行動などを調査した。この結果、過去の水害経験の有無によって住民の行動は全く異り水害経験者は常時水位を観測し、行政からの情報と照らし合わせて適格な行動をとるなど、充分な情報判断力をもち、情報発信者としての適正をもつ事が明らなとなった。既存訓練プログラムの評価では、「みる.きく」型の訓練と「する」型の訓練があり、後者の方が明らかに効果が高いが、マニュアル化された訓練では臨機応変の応用力に欠ける事が問題となっている事が示された。新しい訓練プログラムのニ-ズ分析では発災後の避難に焦点を絞り、一般住宅地における避難と繁華街などにおける浮動人口避難に分けた調査を行った。前者では、情報が全く与えられなかった時の避難者の経路選択が、道路巾員、目的地への方向性に依存する事が示され、後者では、鉄道運行情報が群集行動を決める事が明らかとなった。そこで.これを中心とした訓練プログラムを設計した。
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