研究概要 |
カルボニルスルフィド(以下COSと略)は成層圏に5×10^<11>g存在し、地表からの放出量が5×10^<12>g/yという推定値が提出されている。この推定値が正しければ、COSの放出量は二酸化炭素の1/1000,又同様に微量温質効果気体であるフロンの約1000倍ということになる。COSはCO_2に較べて長波長側の赤外領域に吸収帯をもち,温室効果気体としても重要である。本研究では発生の実態が十分把握されていないCOSをはじめとする含硫気体の発生を、広島市周辺と瀬戸内海西部でモニタリングした。 大気中のCOSはPorapakーQをつめた捕集管で捕集した後、FPDーガスクロマトグラフで定量した。まず広島大学豊潮丸航海(6月6日ー7日)において瀬戸内海伊予灘,周防灘海上における大気を測定したが、この時はCOSは測定されず、CS_2のみ伊予灘において60pg/lという値が1回だけ得られた。また広島市中心部(広島大学総合科学部)では〜10pg/lの値が得れるが、1日の変化は極めて複雑であり、一定の傾向は得られなかった。これは風向、排ガスの寄与など複雑な要因がからみ合うためであると考えられる。一方広島市太田川河口域の海面直上の大気を採取したところ、夏期(8月1日)において1〜5ng/lのCOSを観測したが、特に日照の強い昼間部(11:00ー16:00)でCOSの濃度が増加することを確認した。これに対し冬期(12月19日)においては、10pg/l以下のCOSしか測定できなかった。このことは日照及び気温(水温)がCOSの発生に重要な因子となる事を示唆している。そこで様々な硫黄化合物の水溶液にXeーランプ光を照射したところ、チオ-ル基をもつシステイン酸やナルカプトエタノ-ルからはCOSが発生すること、又SーS結合をもつ化合物からはCOSと共にCS_2が発生することが明かとなった。以上の結果は水圏における光化学反応によりCOSが発生すること、又この過程が水圏から気圏への硫黄のフラックスの存在を示すこと等の点で極めて重要と考える。
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