本年度は研究の初年度であり、1列水平管群における脈動流の寄与について明らかにした。 1.平均熱伝達率特性 浅層形流動層は、粒子層が浅く、圧力損失を考慮した熱的性能は極めてよいが、流動開始速度u_<mf>から最大熱伝達率を示す2u_<mf>まで熱伝達率は単調に増加し、この領域での使用は期待できない。しかし、正弦波の脈動流においては、1Hzを除いて、振幅が大きくなるにつれて熱伝達率は著しく増加し、5Hz近傍では、最大2倍強の増加率を示し、平均熱伝達率は空塔速度に対しほぼ一定の値を示す。ただ流速が2u_<mf>以上に増加し、乱流状態になると脈動流の効果はほとんど期待できない。振幅に対しては、周波数によらず振幅が大きいほど熱伝達率への寄与は大きい。このような周波数および振幅の寄与は、管ピッチによって変化する。一般に管ピッチが狭い程、低周波の寄与が大きい。これは、管間での流路断面積の減少に伴う流速増加によって、高周波数のときは、流動粒子が管下方に落下することなく、管上方に吹き上げられてしまうためである。 2.局所瞬間熱伝達率特性 上述の脈動流の効果が局所的にどのように反映し、また浮遊粒子密度との関連を明らかにするため、小型の薄膜熱流束センサ-を使用して局所瞬間熱伝達率分布を測定した。脈動流の効果が最も期待できる5Hzの場合、管前方領域では熱伝達率は、定常流より若干低下するが、後方領域で著して増加を示す。さらに後方領域では粗密のエマルジョンによる更新効果を示唆する変化を示す。しかし、高速になると、熱伝達率は付加した脈動周期での変化は示さなくなり、乱流状態の定常流と同じランダムな粗密のエマルジョンによると思われる変化が支配的となる。 このように浮遊粒子密度と熱伝達率は密接に関連し、脈動流の振幅と周期によって粒子の浮遊状態、すなわち熱伝達率を制御することが可能であり、管配列などの条件によって異なるが最適条件を決定することができる。
|