本研究はセルロ-ス分解に必要な新しい酵素遺伝子のクロ-ニングを行うとともに、これらの遺伝子を酵母に導入して、セルロ-スよりエタノ-ルを生成する酵母の育種を計ることを目的として計画され、本年度は下記の2項目の検討を進めた。 (1)FI CMCaseの大腸菌での発現 Aspergillus aculeatusの生産するアクセラ-ゼの酵素群の中で膨潤セルロ-ス分解に大きな役割をするFI CMCaseのcDNAクロ-ンの取得をに成功した。ついで、大腸菌で成熟型FI CMCaseを生産させることを目標として、発現ベクタ-を構築した。この構築したプラスミドを大腸菌JM105などの株に導入したところ、大量の酵素生産が認められた。この大腸菌の培養液にグリシンを添加すると、酵素の漏出が起こり、大量の酵素が培地中に蓄積した。この培養液から硫安塩析、DEAEーセファデックスカラムクロマト、トヨパ-ル HW55F疎水クロマトという簡単な操作で収率よく、電気泳動的に均一な精製酵素標品を得た。 (2)FI CMCaseの酵母での発現 FI CMCase遺伝子の酵母での発現を試みた。イントロンを含まないcDNAを用いて、シグナルペプチドを除いた成熟型のFIーCMCaseを酵母内で発現させるように発現ベクタ-の構築し、酵母S__ー.<cerevisiae>___ーを形質転換したところ、分子量的にも免疫学的にも標品と同一のタンパク質が発現していることが確認された。セルラ-ゼ活性は培養約50時間後に最高となった後、減少した。これは発現したタンパク質が、菌体内のプロテア-ゼにより分解されると考えられる。今後、生産性の検討が必要があると考えられる。翻訳産物の局在を調べたところ、発現した成熟型のFIーCMCaseは菌体内に存在していることが明らかとなった。
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