気体を作動媒体とする熱機器において、熱輸送の高効率化を行なうには作動媒体の動力を最小にし、かつ、熱伝達の高いシステムを作らなければならない。これまで、気流中に微細液滴を添加し、蒸発潜熱を利用する方法や、微細な固体粒子を添加し、熱伝達を増加させる方法が考えられてきた。本研究では気流中に添加する固体粒子に機能性を持たせることによりこれらの欠点を克服し、かつ効果的な伝熱の促進と更にその制御を行うものである。分散粒子群に軟磁性粉体を用い、磁場を印加することで、粒子の運動を効率よく、伝熱面近傍に進入させ、熱伝達の増進及び制御を行なう方法を提案する。本年度は、磁力により気流中の磁性粒子群の制御から得られる伝熱性能の向上の可能性を調べた。得られた結果は以下のとうりである。 (1)分散系の粒子にはキュリ-温度が約100℃の磁性粉粒体でニッケル・ジンク(NiーZn)フェライト粒子を用い、100から200μmの球状顆粒粒子が製作できた。 (2)鉛直下方に流れる矩形断面を有する管内流を取り上げた。磁場の作用下での磁性体粒子の挙動をレ-ザシ-トによる可視化およびレ-ザ流速計による測定を行った結果、伝熱面温度がキュリ-温度以上になると、粒子が堆積する事なく流下していく事が確認できた。また、粒子群の伝熱面に向かう速度成分の測定結果から磁場印可による流動場の変化が定量的に捉えられた。(3)局所熱伝達率の測定結果から、磁場印可点から熱伝達率は増大し、一度、極大値を有する分布となる。これは磁場により引き寄せられた粒子が壁面近傍に集まり、局所的に粒子密度が増加したため、粒子の熱容量効果および流体と粒子の相対運動による撹乱効果が効率よく行われたためである。 以上の結果から磁場印加により効果的な局所熱伝達率の増進が可能である事が示され、当初の目的遂行のためのの十分な見通しが得られた。
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