研究概要 |
本研究の目的は三次元結晶に比べて制御の次元の少ない二次元結晶系に着目して、分子構造と結晶構造の相関性を明らかにし、結晶工学における分子設計の指針を確立しようとするところにある。これまでに、水中で自己会合して生体膜類似の二分子膜構造を形成する両親媒性化合物について、単結晶の作製とX線構造解析に成功し、二次元層状構造を基本とする結晶構造であることを見出して来た。本研究においてはアゾベンゼン発色固を疎水鏡中に含む一本鏡型両親媒性化合物CnH_<2n+1>AzoCnH_<2m>N^+のn,mを系統的に変えた化合物群について、化学構造と結晶構造の相関性を明らかにした。 1.化学構造ー結晶構造相関、親水基アンモニウム塩とアゾベンゼン部との間のアルキレ炭素数mが5の化合物では、分子が膜面に対して大きく傾いたJー会合体を、mーnが2の化合物では分子が入れ子状にパッキングしたHー会合体を形成することを見出した。この現象は疎水部分と親水部分の断面積バランスによって説明できることを示した。 2.結晶ー結晶相転移現象、単結晶でみられた化学構造と結晶構造の相関性は、LB膜やキャスト膜などの擬結晶系においても見出された。さらにmーn>2の化合物群においては、加熱に伴うHからJへの転移を発見した。この転移は大きな吸収スペクトル変化を伴うことから、記録材料としての可能性が示された。 3.湿度ならびに光によって誘起される等温的相転移の発見、熱転移によって生じたJー形結晶が、適度な加湿条件下でHー形に転移すること、紫外光照射によるシス型アゾベンゼンの形成をトリガ-としても転移がおこることを発見した。この発見は、光記録材料化という応用的側面のみならず、二次元結晶系における相転移機構の解明に対しても重大な知見を与えるものである。
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