研究概要 |
本年度の研究ではマウスを用いて生体内での特異的抗体産生が、マクロファ-ジのエンドサイトーシスを利用する抗原取り込みの増大によりどの程度増大するかを何回かの実験で検定する計画を実行した。抗原提示には酵母のチトクロムCを用い、これを血清タンパク質、アルファ-2ーマクログロブリンにプロテア-ゼの作用を利用して結合した。マウスをチオグリコレ-ト処理してから、腹腔よりマクロファ-ジをとり出した。マクロファ-ジを培養する培地に抗原チトクロムCを、(1)マクログロブリンとの複合体の形で2,10,20ピコモル入れたもの,(2)遊離の抗原として2,40,2000ピコモル添加したもの,(2)抗原を入れないものの3種を作り培養した。培養マクロファ-ジが抗原を十分とり込んだところで、各グル-プ5匹づつのマウスにマクロファ-ジを戻し、腹腔内での抗原提示を行わせた。以后、マウス飼育5日目に各マウスより血液を採取し、ELISA法により血清中のチトクロム特異性抗体の量を測定した。その結果、動物の個体による変異はあるものの平均すると、抗原をアルファ-2ーマクログロブリンとの複合体として与えた場合は、遊離の抗原を与えた場合に比べて、同じ抗原量の場合5ー10倍の抗体産生がある事がわかった。2の結果は、アルファ-2ーマクログロブリンの受容体を持つマクロファ-ジが、抗原複合体を効率よくとりこみ、高い能率で抗原提示を行なった結果であると解釈できる。免疫反応は、何段階ものカスケ-ド的細胞反応を介して開現されるので、抗原としての入力と、出力としての抗体産生量の間の関係が単なる比例関係、あるいは単調な増大関係にない事はよく指摘される事であり、免疫系賦活化が、目的通りの入出力関係を実現するのは難しいとされている。本研究では、抗原として与える量が極わめて小量である場合に、エンドサイトーシスを利用する事で免疫系が有意に活性化される事を示した。
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