研究概要 |
本年度は、HTaWO_6・mH_2Oおよび(H,Na)_xMo_2O_4・mH_2Oをホストとして種々の有機塩基を直接あるいはエタノ-ル溶液として反応させインタ-カレ-トした。有機塩基をLとして表せば、L_xHTaWO_6・mH_2OおよびL_xH_yMo204・mH_2Oで表される生成物が得られた。生成物の組成をCHN分析により決定し、インタ-カレ-ションおよび乾燥状態の違いによる層間距離の変化をX線粉末回折により測定した。 HTaWO_6・mH_2Oにはキノキサリン(pKa=0.56)がインタ-カレ-トし、HTaWO_6・mH_2はこれまで知られている層状のブレンシュッテド酸のどれよりも強い酸であることがわかる。また、このホストはpーアミノアゾベンゼンのような構造中に不飽和結合を持つ分子もインタ-カレ-トしており、粘土鉱物以外で不飽和結合を持つ剛直な分子をインタ-カレ-トできる特異なホストであることがわかった。 (H,Na)_xMo_2O_4・mH_2O、低い酸素分圧下で合成したNaMo_2O_4・mH_2Oとこれをヨウ素で酸化して得られるNaxMo204・mH20をプロトンでイオン交換して合成した。インタ-カレ-ションの結果、層の持つ電荷密度の相違の効果は見られず、層間距離は炭素数の増加に伴ってほぼ直線的に増加した。ジアミンの誘導体の層間距離の規則正しい変化は、ホストの層間でゲスト分子のアルキル鎖が規則的に配列していることを示している。これまで種々のアルキルアミンインタ-カレ-ションについて報告されているアルキル鎖のtransーcis転移に伴う層間距離の変化がジアミン誘導体に観察された。両端に電荷を持つ可能性のあるジアミンについては、このような現象はあまり報告されておらず、このホストの特異性を示していると考えられる。 以上のように、それぞれの層状化合物が特異な挙動を示すホストであることがわかった。
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