平成2年度は、ブロック共重合体系に観察されるOB構造について幅広い調査を行った。その結果、ブロック共重合体を一成分とする混合系と非線形の一次構造を有するブロック共重合体に観察されることがわかった。前者の例としては、PSーPIブロック共重合体とPVME混合系、組成と分子量の異なるPSーPIブロック共重合体どうしの混合系など、後者の例としてはスタ-ブロック共重合体、グラフトブロック共重合体、ABC星型共重合体などが挙げられる。このうち工業的に一番有用なのはブロック共重合体とホモボリマ-との混合系であるので、次にこのような系について体系的、基礎的な研究を行った。ブロック共重合体を溶液からキャストしたときのミクロ相分離構造が被る非平衡効果を明らかにし、その上でPSーPIジブロック共重合体/PSホモポリマ-混合系のトルエンキャストフィルムにおけるミクロ相分離構造を小角X線散乱法および電子顕微鏡観察により詳細に解析した。その結果、ミクロドメイン中に可溶化したホモポリマ-の分布状態と可溶化の限界およびその分子量依存性、さらにこれらがミクロドメインのサイズおよび形態に及ぼす効果が明らかになった。さらに小角中性子散乱法に用いた研究により、ホモポリマ-の添加によるミクロドメインサイズの増大に伴い、ブロック鎖もまた界面と垂直方向に等体積伸張されること、ホモポリマ-鎖も同様に伸張された形態をとることが明らかになった。また、ブロック共重合体とホモポリマ-の混合に関する基礎研究として、それらの間の相互拡散現象を電子顕微鏡観察という新しい手法により解析した結果、混合過程には鎖の形態エントロピ-の増大に伴うエネルギ-障壁が存在することを見いだした。またこのようなブロック共重合体系が機能性材料として用いられる場合、その表面におけるミクロ相分離構造(表面構造)が機能に重大な影響を及ぼすことが予想されるため、表面構造の電子顕微鏡観察による解析を行い、表面構造形成の一般則を見いだした。
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