研究課題/領域番号 |
02205082
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 博太郎 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 助教授 (10024366)
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研究分担者 |
角田 直人 大阪大学, 工学部, 助教授 (20029200)
藤田 広志 近畿大学, 理工学総合研究所, 教授 (30028930)
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キーワード | 超高圧電子顕微鏡 / 電子照射効果 / 非平衡相 / 原子注入 |
研究概要 |
近年における材料開発は材料の機能性追及に加えて、微細加工による機能の高集積化が要求されてきている。高エネルギ-電子線の照射効果を利用した材料創製は非平衡状態を微小領域に生成することが可能であり、平衡相では得られないような特異な物性の出現が期待される。本研究ではこのような微小領域の非平衡相創製を実用化するために、高エネルギ-電子の照射効果を利用した異種原子の固体内強制注入、特にセラミックス基板中への金属原子の強制注入を取り上げた。具体的には超高圧電子顕微鏡(HVEM)用のシリコンカ-バイド(SiC)膜試料を作製し、その片側表面に白金(Pt)を真空蒸着して、非平衡相創製用の複合試料とした。この試料を日立HUー3000型HVEM内にセットして、金属を蒸着した側から電子照射し、強制注入領域を得ると同時に、照射領域の構造変化をその場観察した。照射終了後この注入試料をSAMに移送して、電子照射領域の状態分析を行った。 得られた結果は以下のようにまとめられる。 (1)Pt/αーSiC二層膜を高エネルギ-電子によって照射すると、まず基板のαーSiCがアモルファス化(aーSic)する。その結果、CおよびSiのダングリングボンドが形成される。(2)高エネルギ-電子との弾性衝突によってPt蒸着層からはじき出しを受けたPt原子は、このaーSiC中にたたき込まれる。(3)これらの孤立した原子として注入されたPt原子はダングリングボンドを有するSiと優先的に結合する。(4)aーSiC中にこのようにしてとり込まれたPt原子は引き続く照射中に高エネルギ-電子によって繰り返しはじき出しを受けるが、その都度新しいSiと結合し直して、次第次第に深部へと移動する。 以上より、電子照射による強制注入の有無は基板構成原子が注入原子を化学的に受け入れるか否かによって決定されることが判明した。
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