化合物半導体は超微粒子化による量子サイズ効果に基づく新規な光機能の発現という点で注目されている。なかでも化合物半導体超微結晶の光学非線形特性の発現において最適な超微結晶の粒径が存在することが近年種々の化合物半導体について報告され、超微結晶調製の際の粒径制御の重要性についての認識が高まっている。われわれは硫化カドミウム超微結晶の調製の際、界面活性剤を用いた水ノヘプタン逆ミセル系において、ビス(トリメチルシリル)スルフィドを硫黄源とし、トリメチルシリル化チオフェノ-ルを表面修飾剤として用いることによって、数nmの硫化カドミウム超微結晶を安定な状態で単離し精製することが可能であり、またこれらの硫黄源と表面修飾剤の仕込比を変化させることによって、超微結晶の粒径制御がある程度可能であることも確かめた。 またこれらのフェニル基で表面修飾を施した硫化カドミウム超微結晶(以下φーcds)はピリジン、DMF等の有機溶媒に可溶であり、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)/φーcds/ピリジン混合溶液のキャストにより黄色透明のフィルム試料を作成したところ、これが高い3次非線形光学特性を示すことを確認した。これらの3次の非線形感受率X^<(3)>の値は分散しているφーcdsの粒径の増大とともに増加しており、一般に超微粒子の減少と共に増大する量子サイズ効果とは相反する結果が得られた。このことから硫化カドミウム超微結晶においてもその非線形光学特性の発現に量子サイズ効果以外の因子、すなわち最適な粒径が存在する可能性が示唆された。
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