研究課題
本研究は短波長可視領域の新しい光・電子デバイス作製の基礎となるIIーVI化合物超格子構造をMBE成長法によって実現することを目的とする。ZnSe成長層とGaAs基板との格子整合上の問題点を把握するため、今年度は(100)、(111)基板に加えて(110)基板上の成長を取上げ成長層の評価を行った。ZnSe成長層の長さとX線ロッキングカ-ブの半値幅との間には、(100)基板の場合には対応関係が認められたが、(110)基板の場合は(111)基板の場合と同様に対応関係は認められなかった。半値幅と基板温度との間には相関が認められ、温度が高いほど半値幅は減少した。ZnSeとGaAsとのBragg回折角の差は成長層が薄いとき大きく、厚くなると共に減少し、(100)基板の場合と同様であった。成長層表面のモホロジ-と結晶完全性との関係を検討し、鏡面よりもくもり面成長のときの方が結晶完全性がよいことがわかった。ウエハの湾曲度をX線法で検討し、成長時にはZnSeとGaAsの格子定数の差から成長方向に凸に湾曲していると考えられるが、室温では両結晶の熱膨張係数の差のため湾曲は逆転し成長方向に凹に湾曲していることがわかった。この結果は今までの報告を訂正するものである。ZnSe成長層のフォトルミネッセンスを12Kで測定し評価を行った。以前に作製したGaAs(100)面を基板としたものでは自由励起子発光線が強く現われ、束縛励起子発光線よりも強く、成長層は純度も結晶性も充分よいことがわかった。しかし今年度作製した(110)基板のものでは自由励起子発光線は観測されず、束縛励起子線と浅いドナ-アクセブタ-対発光線のみが観測された。(100)基板のものに比べ純度が劣るとは考えられないので、結晶性がかなり劣っているといわざるを得ない。
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