研究概要 |
我が国には約200万人のインスリン非依存性(成人型)糖尿病患者がおり、それは心臓病、脳卒中などの血管障害発症の重要な危険因子の一つとなっている。この糖尿病は遺伝性であり、インスリン依存性(小児型)糖尿病とは異なり細胞のインスリンに対する応答に主な障害があると考えられているが、その病因は現在までのところ不明である。インスリンは細胞表面上にあるインスリンレセプタ-と結合することにより作用を発現するため、遺伝因子としてまず第一にこのインスリンレセプタ-遺伝子の異常を考える必要がある。実際我々は2例のインスリンレセプタ-異常症を報告してきた。しかし糖尿病患者の多くは末期にはインスリン分泌が低下してくるため、インスリンレセプタ-異常のみで糖尿病が発症するかどうか議論のあるところである。インスリンレセプタ-はαとβサブユニットよりなり、細胞外ドメインのαサブユニットにインスリンが結合すると細胞内ドメインβサブユニットのチロシンキナ-ゼが活性化され、インスリン作用が発現される。 ヒトインスリンレセプタ-βサブユニット1030番目のリジンをsiteーdirected mutagenesis の方法でメチオニン,アラニン,アルギニンに変えた3種のcDNAをすでに作製しており、それらをハムスタ-細胞で発現させ、インスリンは結合するがβサブユニットのチロシンキナ-ゼ活性は消失していることをすでに確認しているので、チロシンキナ-ゼ活性を失ったレセプタ-cDNAをnativeなプロモ-タ-下流に入れ、トランスジェニックマウスを作製することを試み、異常レセプタ-遺伝子の入っているF_0を3匹、およびF_1を5匹得たので、現在各組織でのmRNAの発現および糖尿病状態を検索中である。
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