研究概要 |
本年度は、以下の研究会並びに全体集会における報告に基づいて、討論をおこない、個別の専門領域相互の交流を深め,本研究班の主たる研究テ-マである「都市の外部ネットワ-ク」に関する総括的な把握をおこなった。研究報告並びに報告されたテ-マ,その概要については以下のとおりである。 1.濱下武志「華僑の送会ネットワ-クの検討」 福建・広東など華南地域から東南アジアへの移民は、自らの郷里の家族に送金をおこなって家計を支えてきた。この送金は、送金者から受れ手に渡る間に、多くの利益機会を提供している。送金業者は、手持ち資金を商品・為替・金銀などに投資し、それを香港において運用して利益を得ていた。この送金網が,華僑による資金の都市間移動のネットワ-クを形作っていた。 2.長島弘「ムガル都市の貿易ネットワ-ク」 インド洋交易圏におけるグジャラ-ト商人の役割が重要であることは、彼らとポルトガル商人との交易の歴史の中で十分に示されている。ただし、この商人の役割と同時に無視できない交易に対する影響力として、地方権力の交易管理と保護を注目する必要がある。地方権力の関税政策や安全確保の政策によって、インドを媒介地とするインド洋交易が発達してきた。 3.濱下武志「華僑商人とインド洋交易」 華僑商人の中には、雲南から東南アジアに南下した回族の商人も含まれる。また,福建者泉州から南下した漢人のイスラム商業の担い手も、華僑と東南アジアとの間の交易ネットワ-クの拡大に寄与したことも無視できない。華僑商人が漢人のみならず、回族やウイグル族によっても構成されていた点は十分に注目する必要があろう。
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