プラズマ中に生成される活性種(ラジカル・イオンなど)がどのような挙動をとって化学反応に関与するかを解明することを目的として本研究を行なった。一般に、プラズマ中の活性種がどのような種との反応によって安定な種へと変化するのかをN_2ーH_2系を例として檢討した。この際の実驗手法としては、プラズマの下流にD_2を消光剤として加え、反応に関与するH_2をD_2に置換して反応に伴うD_2の挙動を発光分光分析、質量分析などによって確認するとともに、生成物としてのアンモニアの収量を求めた。以下に得られた結果の概略を記す。 (1) マイクロ波放電によって発生したN_2ーH_2プラズマの下流においてプラズマ中に消光剤として水素を加えると、アンモニアの収量は増加しプラズマ中のNHからの発光強度は弱わまった。 (2) 消光剤として水素の代りに重水素を用いた場合にも、プラズマ中のNHからの発光強度は弱まった。質量分析によれば、プラズマ中および生成物中のいずれにおいてもND_2Hの存在が確認されており、重水素分子がNHと反応してND_2Hが生成されたことを示唆している。このことは、NHとH_2が反応してNH_3が生成されることを示唆している。 (3) 更に消光剤の導入口に誘導結合方式によってラジオ波を供給したところ、プラズマ中においてNHラジカルおよび水素原子とも増加したにもかかわらずアンモニア生成量の減少が見られた。 以上の結果より、N_2ーH_2プラズマ中においてアンモニアはNH(またはNH_2)と水素原子よりも水素分子との反応によって生成されると推測した。
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