研究概要 |
アクチナイド化合物の5f電子の挙動は稀土類化合物に含まれる4f電子の延長としてとらえることが出来る。本研究では4f電子系の代表的化合物である稀土類ヘキサボライドと5f電子系化合物であるウラン化合物について研究を行い次のような成果を得た。 (1)稀土類ヘキサボライド A:遠赤外領域 分子科学研究所の放射光施設で得られる高輝度遠赤外線を用いた反射と透過分光実験により、低温で発現するSmB_6の微小エネルギ-ギャップの観測を行った。スペクトルの詳しい温度変化を観測することによりその正しい値を算出すると共に、フェルミエネルギ-近傍の詳しい電子構造を説明するモデルを提唱できた。 B:赤外領域 稀土類ヘキサボライドの稀土類原子をLaからYbまで系統的に代えた化合物についてその光伝導度スペクトルを観測した。従来、この物質の赤外スペクトルでは“異常赤外吸収"が存在し、その起源は謎とされていた。本研究によりこの吸収強度がこの物質に含まれる4f電子のスピン角運動量の大きさに比例するという重要な側面が明らかとされた。このことにより、その吸収の起源は伝導帯のs,p電子が4f電子スピンによる散乱を受けることによるバンド内遷移であることが明かとされた。この研究で提唱されたf電子スピンと関連した吸収機構は今後f電子を含む物質全般の光学的性質を理解するうえで極めて重要な役割を果たすものと思われる。 (2)ウラン化合物 5f電子を含むU_3AS_4,U_3P_4の0.01ー25eV領域での反射率スペクトルを観測した。稀土類ヘキサボライドに比べて全体に鋭いピ-ク構造を持たないなだらかなスペクトルは5f状態が局在していないことを示唆している。
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