研究概要 |
まず、UーNiーInとUーNiーSnという未知の三元相図の中に新物質を見出す為に、UaNibXcの組成比を(1:b:1)(1:1:c)として,b,cを1,2,3,4,5という組成せの試料を作製した。X線粉末線回折と金属顕微鏡による組織観察によって単相と確認されたものは(1,1,1);(1,2,1),(1,4,1)(3,3,4)であった。次に(1,2,1)と(3,3,4)に組成比を絞りT元素をNi,Pd,Pt,Cu,Ag,Auとし,XをSn,Sbとした化合物を試作した。この様な物質探索によって7つの新化合物を見出した。それらは,AlPt_2Zr型六方晶構造を持つUCu_2Sn,ホイスラ-型立方晶構造を持つUNi_2In,UNi_2Sn,Y_3Au_3Sb_4型立方晶構造を持つU_3T_3Sn_4(T=Cu,Pt,Au)とU_3Cu_3Sb_4である。以下にこれらの興味ある物性を概要する。 UCu_2中でU原子が成す三角格子面は,二枚のCu原子から成る面に挟まれているので,準二次元的な三角格子とみなせる。17Kで起こる反強磁性転移に伴って電気抵抗は急上昇し,15.5Kでピ-クを成す。これは、反強磁性秩序によってフェルミ面の一部にギャップが生じた為であろう。この点を明確にする為に,現在単結晶を育成して研究継続中である。 U_3T_3X_4はTとXの組み合わせによって,重い電子系から半導体,さらには強磁性体へと多彩な物性を示す。すべてのSn化合物において、重い電子的挙動が現われる。電子比熱係数はT=Ni,Ptで90mJ/K^2molUであるが、TをそれぞれCu_1,Auへと置換するとγ値は300mJ/K^2molUへと増加する。この質量増強は、d電子数が増えることにより、5fーd混成が弱まった為である。一方,Sb化合物のうちT=Ni,Pd,Ptは、いずれも0.2eVのバンデギャップを持つ半導体である。ところがTをCuとすると金属強磁性体へと変わる。以上の結果から,U_3T_3X_4化合物が,重い電子系となるか,あるいは半導体となるかは,主に5P電子の数によって決まることが明らかになった。
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