UーTーSn_3(T:Ru,Rh,Ir)系化合物の探索と輸送測定による評価

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02216210
• 研究機関: 東京都立大学
• 研究代表者: 佐藤 英行 東京都立大学, 理学部, 助教授 (80106608)
• 研究分担者: 坂本 功 東京都立大学, 理学部, 助手 (80094267)
• キーワード: 重い電子 / ウラン化合物 / 輸送効果

研究概要

我々はこれまでRERuSN_3(RE:軽希土類)について結晶育成と物性測定を行ってきており、CeRuSn_3で高濃度近藤的振舞い、SmRuSn_3で価数揺動的振舞いを見いだした。この物質系はRE間距離が4.8オングストロ-ムと大きく、REサイトをUで置換した系も興味深い。U_3Rh_4Sn_<13>とU_3Ru_4Sn_<13>の育成に成功した。U_3Rh_4Sn_<13>の電気抵抗は降温と共に対数的に増加し飽和傾向を見せた後、17Kで再び急な増加を示す。1.5K迄抵抗減少は観測されない。帯磁率は高温でキュリ-ワイス則に従うが、17Kに急激な増加が観測される。何等かの磁気オ-ダ-が起きていることを示している。低温での電子比熱係数は〜260mJ/mol.K^2であり、かなりの質量増加がある。U_3Ru_4Sn_<13>の帯磁率も、高温でキュリ-ワイス則にのり、1.8Kまで磁気オ-ダ-を示さないが、低温でかなり大きな値を持つ。電気抵抗の温度依存は、U_3Rh_4Sn_<13>と異なり、低温から〜100Kにかけて急激な増加を示し、スピンフラクチュエ-ション散乱を示唆する。Snを含む3元系を調べるにあたり、UーSn系の金属間化合物の物性を知ることは基本的な問題であるが、USn_3以外の化合物については全く知られていない。そこで、U_3Sn_5及びU_3Sn_2の育成と物性測定を行った。U_3Sn_5については残留抵抗〜μΩcmの良質の試料がつくられた。低温で強磁性であるが、50K〜100Kに複雑な磁性を示す。抵抗は温度低下と共に増加して、70Kで急激な曲がりを示した後、低温でマグノン散乱によると思われる。T^2依存を示す。U_3Sn_2は〜50Kで強磁性転移を示し、SQUID磁束計による磁化の垂直成分が5.5Tでもかなり大きいことは、異方的な強磁性体と考えられる。更に、Ce系との比較を行うため、多種のU化合物で熱電能の測定が行われ、いくつかの特徴ある振舞いが捉えられた。

研究成果

• [文献書誌] Hideyuki Sato: "Some Characteristics of the Thermoelectric Power in Uranium Intermetallic Compounds" J.Phys.Soc.Japan. 59. 3687-3690 (1990)
• [文献書誌] T.Fukuhara: "Critical Magnetic Behaviors in CeRuSn_x(2.85≦x≦3.15)" Physica B. 165&166. 443-444 (1990)
• [文献書誌] H.Sato: "Magnetic and Transport Properties of New Uranium Compounds U_3Sn_5 and URuSn_x" Physica B. 165&166. 445-446 (1990)
• [文献書誌] S.Takayanagi: "Heavy Fermion Behaviour in CeRuSn_3 Compound." Physica B. 165&166. 447-448 (1990)
• [文献書誌] I.Sakamoto: "De HoasーVau Alphen Effect in LaGa_2 and SmGa_2" Physica B. 165&166. (1990)
• [文献書誌] T.Fukuhara: "Transport and magnetic properties of RERuSn_3(Re=La,Ce,Pr,Nd,Sm):a heavy fermion compound CeRuSn_3 and a new valence fluctuating compound SmRuSn_3" J.Phys.:Condens.Matter.