我々はアロマタ-ゼがチトクロ-ムPー450としては、かなりユニ-クな蛋白・酵素化学的特性を持ち、またDNA塩基配列上も他のPー450と比較してかなり独自の進化的位置を占めていることを明らかにしてきた。アロマタ-ゼは分化・増殖因子様作用を持つエストロゲンを制御することにより性周期形成などの様々の生理的に重要な機能に関与していると推定され、その発現制御機構は組織に依存して複雑である。本年は、このようなアロマタ-ゼの持つ様々な生理機能を明らかにしていく目的で、先ず定量性を持つように改変したRTーPCR法により、その組織局在性を調べてみた。その結果、性腺以外の組織では、アロマタ-ゼは胎児において肝臓・脳に多く局在するが、成長に伴って肝臓のアロタマ-ゼはほとんど検出できなくなり、そして成熟後は脳・胸腺・副腎・肺・脂肪組織などに広く局在していることも確認できた。脳内アロマタ-ゼは性分化・性行動への関与が示唆されており、この点を詳しく解析するのに適したウズラを実験動物として選びその脳内分布を調べ視索前野での局在を確認した。さらにウズラ脳アロマタ-ゼcDNAを単離し、発現レベルでの解析を行っている。また肝臓・脂肪細胞ではアロマタ-ゼ発現は分化・増殖と関連していることが示唆されたので、これも詳細な解析を進めている。また組織に依存して複雑に理解を得るため、この遺伝子の5'ー転写調節領域の転写活性を調べ、転写調節部位の検索を進めた。まず上流2.8kbまでの範囲について調べてみた。唯一の基本的転写活性の部位を500bp上流に見つけたが、これ以外には、アロマタ-ゼの持つ複雑な発現調節を説明できるような転写調節部位は確認できなかった。現在、さらに上流域にわたって転写活性を調べることによりこのような部位の検索を進めている。
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