われわれは、今まで植物性食品を中心とする天然素材に着目して、多種多様な天然抗酸化・抗変異原物質の検索を行ってきた。 その一環として本年度は、まず、アメリカのカルフォルニア州に自生する蘚苔類であるHypagymnia enteromorphaについて、カリフォルニア大学デ-ビス校のShibamoto教授との共同研究により化学的検索を行ったところ、変異原性を有するファイソダリック酸とともに主成分の一つとして存在するファイソディック酸が代謝活性化を必要とする間接変異原。特に、ヘテロサイクリックアミン類のような間接変異原に対して強い抑制作用を示した。そこで、その作用機構についてTrpーP2をもちいて詳細な変異原性抑制機構についての検討を行った。その結果、ファイソディック酸は、TrpーP2が肝臓中のミクロゾ-ムのPー448系により代謝活性体であるNーOHーTrpーP2に変換される過程を阻害することが明きらかとなった。 一方、我々は今まで、ゴマ種子よりセサミノ-ルをはじめとするリグナン類縁の抗酸化物質を見いだすことができたが、さらに、新しいタイプの抗酸化物質の検索と共に量的生産を目的に培養細胞に着目し、大量に高温下培養を行い、ウサギ赤血球膜ゴ-ストを用いた生体系脂質過酸化抑制効果を指標に活性物質の検索を行ったところ、フェノ-ル配糖体のアクテオサイドと共に、構造未知の活性物質を得ることができた。さらに、生体内脂質過酸化反応の評価法として従来一般的に用いられているTBA法に代わるHPLCを用いたマロンアルデヒドの特異的な検出法の開発を試みた。方法は、脂質過酸化反応で生成したマロンアルデヒドを酸性条件下で尿素と反応させ生成した2ーヒドロキシピリミジンをHPLCで定量するというもので、マロンアルデヒドに特異的であると共に定量性も高く極めて簡単であるという点で優れている。
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